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ナックルボールの科学

ナックルボールの科学

自分が投げている球のことを深く知ることは、自分を助けてくれるはずです。
ナックルボールの場合には、まず変化の原理を知ることが重要です。
どこを握ればいいか?どのくらいの回転精度を目指して投げればいいのか?どうして打者が打てないのか?天候がどう関係してくるのか?こういう疑問に対して答えをくれるでしょう。
しかし、ナックルボールの科学的研究はそう多くはありません。
福岡工業大学の溝田武人名誉教授の流体力学研究が有名で、溝田先生の論文を読めば、多くのヒントを得られるでしょう。
僕は大学時代にナックルボールの投球動作解析を行いました。ナックルボールの投球時の腕のみの動きに着目した研究です。今後は下半身も含めた全身の動作解析を、より多くの被験者を集めてできたらと思っています。ナックルボールの研究の難しさは、被験者が多くないことです。


変化の原理を知ろう

ナックルボールが変化をするのは、縫い目が空気抵抗を受け、ボールの後方にできる空気がいずれかの方向に引っ張られるからです。縫い目と革の空気抵抗の差が不規則な変化を生み出すので、新しいボールの方が有利です。常に新しいボールでプレーできる高いレベルでプレーできた方が、より結果を出しやすいと言えるでしょう。
詳しい変化の原理は、以下の画像と共に説明します。これは前述の溝田先生の論文を基にして、かなりざっくりと説明しています。詳しくは論文を読んでみてください。

下の画像は、右側から左側に向かって進むボールを上から見た図です。左側がボールの進行方向ですので、空気は左側から流れてきます。θ=0°の時、青い矢印で示した境界部分で、ボールの縫い目によって空気が層流から乱流に変わります。乱流はボールの表面近くに長く止まり、剥離点は後ろにずれます。この角度では、縫い目の位置は左右対称なので、どちらの方向にも曲がりません。
θ=45°では、層流が乱流に変わるトリガーとなる縫い目がないので、ボールの側面にある縫い目が層流の剥離点になります。左右対称なのはθ=0°と変わりませんが、後ろに伸びる空気の渦の長さが伸び、空気抵抗が大きくなります。
一番横に曲がる力が大きいのはθ=35°で、画像の上側では縫い目で層流が乱流に変わり、剥離点が後ろにずれます。画像の下側では、縫い目が層流の剥離点となるので、ボールの後ろの空気の渦が画像の下方向に伸びるので、ボールは作用反作用の法則に従い、上方向に変化します。

0do 3545doのコピー 3545do

回転数と変化の関係

以上は変化の原理ですが、変化の振幅はボールの回転数の2乗で小さくなり、変化するのは秒速1回転という回転数までです。しかし、これがθ=35°が保たれた状態でジャイロ回転をしたならば、秒速4回転まではなんとか変化します。
θ=35°で投げられる確率を考えれば、基本的には秒速1回転以下で投げなければなりません。
そして、もしもボールの縫い目の感覚が狭い側が進行方向を向いてしまうと、変化のチャンスはさらに減ってしまいます。だからこそ、ナックルボールの握りで述べた場所を握ることが重要なのです。

たまにtwitterなどで「無回転が投げられるけど変化しない」という質問を頂きますが、変化は物理学に逆らうことはありません。変化しないという時に考えられる理由は、
・ボールが古い・球速が遅すぎる・よく見ると意外と回転してる・たまたま変化が見えずらい方向を縫い目が向いている
というところでしょうか。

変化の理論がなんとなくわかっていただけたでしょうか?
このサイトでの説明では不十分かもしれませんし、論文を読めばもっと色々なヒントを得られるかもしれません。色々な面からナックルボールを追求していってください。


参考文献

1. 溝田武人,久羽浩幸,岡島厚(1995)「ナックルボールの不思議?(第1報 準定 常理論による飛翔解析とフラッター実験)」『日本風工学会誌』第 62 号 pp.3-13
2. 溝田武人,久羽浩幸,岡島厚(1995)「ナックルボールの不思議?(第2報 硬式 野球ボールの Wake Field と空気力)」『日本風工学会誌』第 62 号 pp.15-21
3. 溝田武人,河村良行(2007)「サイドスピン形ナックルボールの三次元飛しょう 軌道画像解析による準定常横力について」『日本旗か医学会論文集 B 編』73 巻,734 号 pp.1981-1986
4. 溝田武人,錦織大介(2004)「スパイラル回転ナックルボールに関する研究」『平 成 16 年度第 82 期日本機械学会流体工学部内講演会』

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