ナックルボールの握り

ナックルボールの握りの基本

日本で得られるナックルボールの情報は、握りすらも正しく解説されていることは稀です。
しかし、ナックルボールを定義するとすれば、

1、拳を突き出したような握りをしていること。
2、無回転を投げられること。

の2点でしょう。だとすれば、握りに正しい間違いということはありませんが、いろいろな握りの中で、いろいろな特徴と無回転の投げやすさに差があります。
このページでは、そのあたりを解説していきます。
自分にあった握りを見つけてください。


オススメしない握り方

まずは、ナックルボーラーになりたいのであれば僕がオススメしない握り方を紹介します。
写真1をご覧ください。この握りは日本で紹介されるナックルボールの握りの中で一番多いのではないでしょうか?
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何本指を折り曲げるかに関係なく、指の第1関節、もしくは第1関節と第2関節の間のあたりをボールに押し付ける握り方です。この握り方をオススメしない理由を説明します。

1、毎回握るのが大変
1試合に100球投げるとして、毎回この握りをするのは大変な労力です。握力の消費量も大きいと思います。
基本的にナックルを投げるのにそこまで握力を必要としません。現に僕も握力は平均的ですし、試合中に握力がなくなって投げられなくなることはまずありません。しかし、日本でよく言われるのは、ナックルは握力が必要なので日本人には向かないというようなことです。もしかしたら、それはこの握りに原因があるかもしれません。

2、指が痛む
日本人がナックルを投げられない理由として、爪が弱いというのがよく挙げられると思いますが、それもこの握りの勘違いによるものかもしれません。爪や、爪と指の間の皮膚等に大変な負担がかかります。正しい握りをすれば爪が割れることはほとんどありません。

3、単純に無回転を作りにくい
この握り方で無回転を作ろうと思ったらどうしたらいいでしょう?
指で ”弾く” か、手首を固定して “砲丸投げ” をするかでしょう。砲丸投げでは、スピードを出すことはできません。第一、砲丸投げのような投げ方をするのであれば、指を折り曲げる必要もないでしょう。
そして、指で弾くということはトップスピン方向にボールを回転させるように力をかけるということです。でも無回転を作るには、それ相応のバックスピン方向にボールを回転させる力が必要で、二つの力をちょうど相殺させるように投げなければなりません。
ボールの慣性モーメント(回転しにくさ)の小ささを考えれば、その力の均衡を作り出すことの難しさは想像できます。その均衡を、大きなトップスピンとバックスピン方向の力の相殺で作り出すのはあまり賢いとは言えません。指とボールの小さな摩擦にさえ簡単に左右されてしまいます。

以上のことから、もしもあなたが今、本格的なナックルボーラーを目指していて、この握り方で練習しているのであれば、すぐにやめて、次から紹介する握り方に変えることをオススメします。


指先および爪の先をボールに押し当てる握り方

まずは写真2をご覧ください。
指先および爪の先をボールに押し当てる握り方が、アメリカでもっとも主流な握り方で、2本指の人もいれば3本指の人もいるという違いこそありますが、今までこの握り方をしていないナックルボーラーと出会ったことはありません。写真3は3本指の例、写真4は中指と薬指を使った2本指の例です。

前項の真逆のようになりますが、この握りをオススメする理由を解説しましょう。

1、握るのが楽
この握りはさほど難しくありません。握りは強すぎず、弱すぎず、心地良い強さで握ってください。握力は必要ではありません。

2、指が傷みにくい
爪が割れるのは、爪に対して横方向からの力や、ねじれなどの負荷がかかった時です。この握りでは、力は爪の長軸方向に力がかかるので割れにくいと思います。僕は高校時代に何度か爪が割れましたが、それ以降爪が割れたことはありません。高校時代に割れていたのは中指の爪の端で、斜めに負荷がかかってしまっていたからだと思います。

3、無回転を作りやすい
この握りの方が、無回転で投げやすく、またそれを維持しやすいです。なぜなら、腕に無理な動きをさせなくて済むからです。この握りでは、腕が振られるとき、指先がキャッチャーの方向を向き、ボールの中心はキャッチャーと指先を結んだ線常に近いところにきているはずです。無回転を作る一番簡単な方法は、ボールの中心方向に力をかけることです。砲丸投げのようなフォームでもそれはできますが、スピードが出ません。この握りでは、野球の腕の振りに近い腕の振り方で、まっすぐボールの中心方向に力を加えることが可能です。
そのためには体の使い方を工夫する必要があります。体の使い方はストレートのそれと全く違いますが、腕の振り方はあまり無理のない振り方ができます。体の使い方にさえ気をつければ、無回転を維持しやすいのです。

私は中学時代からこの握りで投げています。初めは写真3の握りで、次に写真4のような握りになり、最終的に写真2に落ち着きました。
皆さんも試してみてください。


ボールのどこを握る?

握り方の基本は分かっていただけたかと思います。
それでは、ボールのどこを握ればいいでしょう?大切なのは以下の3点です。

1、握って心地よい
ナックルボールは非常に難しく、繊細なボールです。握った時に心地よくなければ、投げられません。また、試合中にボールを握った時に違和感を感じたら、すぐに審判にボールを変えてもらいましょう。投げる前にメンタルが崩れ、握りに気を取られていては、無回転は投げられません。

2、縫い目に触れない
ボールに回転を与えるのは簡単です。少しの摩擦の変化で簡単にボールは回転します。縫い目の高さや幅はボールごとに違いますが、革はあまり変わりません。無理のない範囲でなるべく縫い目を避けて握ってください。

3、縫い目の間の広い面をキャッチャーに向ける
これは流体力学の観点から見た話なので、詳しくはナックルボールの科学の章で解説しますが、流体力学的には、写真5の面よりも、写真6の面が進行方向を向いている方がよく変化します。メジャーのナックルボーラーの握りをよく見てください。ほとんどがこの面が進行方向を向くように握っているのがわかります。


多種多様な握り

ここまで解説してきたのは、僕が学んだことから導き出した理想の握りです。しかし、世の中のナックルボーラーはそれぞれ特徴的な握りをしています。
その例を紹介していきましょう。

1、小指を立てる
写真7は、Tim Wakefield投手とR.A. Dickey投手に代表される、小指を立てる握り方です。この握りをするにはある程度の手の大きさは必要かもしれません。
僕も以前、Time Wakefield投手に憧れて小指を立てて握っていましたが、立てた小指がグローブの中で収まりが悪い事と、この握りをしている時に肘に痛みが出たことからやめました。
しかし、素晴らしいナックルボーラー二人がこの握り方をしているので、試す価値はあるでしょう。

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2、人差し指だけたたむ
写真8は、元広島カープのJared Fernandez投手の握りです。これは僕も試したことがありませんし、理由もわかりません。しかし、本人が握り心地が良いならこのような握りもありだという良い例です。

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3、縫い目に思いっきり触れる
写真9は、Steven Wright投手の握りです。この握りの素晴らしいところは、流体力学的に見れば、一番変化が大きくなると予想されるところです。しかし、この握りの問題点は、縫い目に思いっきり指が触れていることです。僕も試しましたが、握り心地が悪すぎて僕には合いませんでした。

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4、主に中指1本で投げる
写真10は、Tim Wakefield投手の投げる直前の指の形です。彼は写真7のように握りますが、投げる瞬間の写真を見ると、写真10のようになっています。僕は高校時代、中指一本で押す感覚でしたが、中指の爪に変な方向に負荷がかかり、爪が割れることもありました。これも、手の大きさが必要な握りかもしれません。

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